個人再生のメリットは、持ち家などの財産を残しながら借金を大幅に減らせる点です。
一方で、収入や借金総額によって「個人再生ができないケース」があることもご存知でしょうか?
個人再生するための条件・裁判所に認めてもらうためのポイントを知って、できる限り失敗を防ぎましょう。
目次
個人再生が認められない状況とは
個人再生をするにあたって、裁判所に手続き開始そのものを認めてもらえないケースがあります。そのパターンは民事再生法にまとめられており、要約すると次の4つとなります。
個人再生が認められないケース例
①予納金(裁判所に納める費用)が用意できない
②「破産もしくは特別清算手続きのほうが良い」と裁判所が判断した
③「再生計画案の作成・認可の見込みがない」と裁判所が判断した
④「不当な目的で申立てされている」と疑われてしまった
参考:民事再生法25条
つまり「減額しても完済できるだけの収入がない」もしくは「自己破産のほうがローン契約の当事者双方にとってタメになる」と判断されてしまうと、個人再生は認められません。
また、債務整理することを決めているにもかかわらず更に借金してしまった場合は、不正な申立てだと指摘されています。
具体的に、個人再生に失敗するケースを見てみましょう。
ケース①「収入に対して借金が多すぎる」
個人再生が認められる債務額の上限=5,000万円以下です。たとえこの条件を満たしていても、原則3年以内に完済できる見込みがなければ、個人再生の申立は認められません。
申立できるかどうかのポイントとなるのは、収入と債務額です。
再生認可決定後により借金は1/5程度まで減額してもらえるため、これを36回払いで返済できるよう家計に余裕を持たなければなりません。
→200万円÷36回払い≒月々56,000円払えることが条件。
→100万円÷36回払い≒月々27,000円払えることが条件。
例②の通り、下限まで減額してもらったとしても毎月支払額=約3万円の返済が求められます。住宅資金特別条項を使って持ち家を残す場合、別途住宅ローンの支払いを続けなければなりません。
再生申立の際に提出する「家計収支表」では、返済を続けられる余裕があるかどうかが厳しくチェックされています。返済が苦しくなって借金がかさんでから・何らかの理由で収入が減ってからの申立では、個人再生の成功率は下がってしまいます。
返済期間は最長5年まで延ばしてもらえる
3年以内の返済がどうしても難しい場合、その理由を説明することで最長5年まで延ばしてもらうことが出来ます。
二、最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること。
引用:民事再生法第229条
特別な事情とは、個人再生する人本人またはその家族の病気・一時的な失業などのことです。再生認可決定後に一定の返済実績を積むことで、あとから返済期間延長を申し出る「再生計画変更」や残債を免除してもらえる「ハードシップ免責」も申請可能です。
専門家としっかり話し合いを行い、家計の状況・いま現実的に支払える金額について把握しておきましょう。
個人再生手続き後の返済期間については、こちらの記事でも分かりやすく解説しています→『個人再生の支払期間は大体どのくらい?延長することは可能?』
ケース②「収入が不安定」
十分な収入があっても、働き方や金額に安定性がないと、再生認可されにくい傾向にあります。裁判所が収入の安定性を認めてもらえるか、以下の項目を振り返ってみましょう。
個人再生で問われる「収入の安定性」とは
- 最長でも3ヵ月に1度のペースで収入を得ていること
- 定期収入の金額のブレが小さいこと
気を付けたいのは「年間を通して安定した売上のない自営業者」や「水商売等の完全歩合制の職業の人」です。どうしてもその仕事を続けるしかない状況の場合は、適切な方法で裁判所に理解を求めていく必要があります。
ケース③「履行テストの失敗」
個人再生申立の約1週間後から、裁判所の指示で毎月お金を積み立てなければなりません。これは「履行可能性テスト」と呼ばれ、減額後に分割返済を続けられることを証明するための大切なプロセスです。
指定された通りに積み立てられない場合、個人再生を認めてもらうことはできません。したがって、申立の準備期間(債権調査+申立書類作成の約1カ月半)のあいだに、テスト合格を意識して生活を再建しておく必要があります。
テストは最長6ヵ月間まで伸ばしてもらえる
履行テストは6回(6カ月間)まで実施してもらうことが出来ます。
どうしても生活再建に時間がかかる場合・途中で指定された積立日に間に合わなかった場合は、すみやかに個人再生委員※に報告しましょう。この際、今後はきちんと返済できることをしっかりと説明し、理解を得る必要があります。
※個人再生員とは?…裁判所に選ばれた調査担当者のことです。再生申立をした人の家計や生活状況について、公平中立的に調べて報告する役目を負っています。
個人再生の「履行可能性テスト」に不安のあるかたは、こちらの記事も参考にしてみてください→『個人再生の積立金とは?積立金ができないとどうなる?』
ケース④「債権者の同意を得られなかった」
個人再生手続きは「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
ほとんどのケースで減額幅の大きい「小規模個人再生」が選択されますが、再生認可決定をもらうには債権者の同意が欠かせないというデメリットがあります。
この際に反対(不同意)があると、再生認可決定をもらうことは出来ません。
【参考】個人再生手続きの種類 | ||
---|---|---|
手続きの種類 | 減額後の返済額 | 債権者の同意 |
給与所得者等再生 | 債務額の1/5(下限100万円)かつ、可処分所得×24か月分以上 | 不要 |
小規模個人再生 | 債務額の1/5(下限100万円) | 必要 |
個人再生の失敗を防ぐためにやるべきこと
個人再生申立て後に失敗すると、残された借金問題解決の道は「自己破産」のみです。持ち家や車を手放し、職業によっては業務制限も受けることになります。
こうした失敗を防ぐため「本当に個人再生すべきか」「裁判所と債権者に認めてもらうためどうすべきか」を考えましょう。
【個人再生の失敗を防ぐための方法】
- 任意整理を優先的に検討する
- 弁護士とよく話し合い、借金問題だけでなく就職状況&生活の相談もしておく
任意整理でも、利息・過払い金分を減額した上で完済を目指せます。貸金業者との交渉がまとまれば手続きが完了し、裁判所の判断を仰ぐ必要はありません。住宅ローンを整理対象から外すことも可能です。
もっとも重要なのは、フィーリングの合う弁護士に手続きを依頼することです。
債務整理の方向性はケースバイケースで、依頼する人の抱える生活上の不安によって、解決可能な方法はまったく異なります。言いにくいことでも包み隠さず打ちあけなければ、適切に手続きを進めてもらうことは出来ません。
まずは法律事務所の無料相談を利用して、依頼前に「弁護士は親身になってくれるか」「話しやすい雰囲気か」を確かめてみましょう。
まとめ
個人再生の是非を裁判所が判断する際、収入・債務額・履行テストを元に「減額すれば3~5年以内で完済できるか」という点がチェックされます。さらに債権者(消費者金融や銀行など)が再生計画に同意してもらい、ようやく再生計画認可決定をもらうことが出来ます。
「そもそも個人再生すべきなのか?」
「どういった方向性で裁判所&債権者とやり取りすべきか?」
信頼できる弁護士に依頼して、こういった点から整理して見つめなおすことが大切です。