2020年4月から施行される「120年ぶりの民法大改正」では、借金の消滅時効の考え方が大きく変わります。知らずに債務整理に着手すると、思わぬ失敗が生じるかもしれません。

これから時効の援用手続き(時効成立を主張して返済義務を消滅させるもの)を行おうとする人は、本記事で法改正のポイントをしっかり押さえておきましょう。

 

民法改正で消滅時効の何が変わる?

民法大改正で変化する借金時効のポイント

 

今回の法改正の目的は、改正前の分かりづらかった消滅時効の仕組みを分かりやすくすることです。具体的な改正内容の解説に入る前に、まずはポイントをまとめてみましょう。

 

改正点1:消滅時効成立までの期間を変更

→債務者の立場が法律上不安定になる期間を短縮するため、消滅時効5年のルールを新たに導入

 

改正点2:商事債権の消滅時効の廃止

→商法の短期時効ルールをなくし、借金の時効の考え方を民法に統一

 

改正点3:職業別の短期消滅時効の廃止

→一部の職業でビジネス上生じた債権の短期時効ルールをなくし、借金の時効の考え方を民法に統一

 

1~3の改正のポイントについて、具体的にどのように変わったのでしょうか。以下でさらに解説を進めます。

 

改正点1:消滅時効成立までの期間を変更

改正の最初のポイントは、民法第166条・第167条の条文変更です。変更が加わったことで、消滅時効は次のように変わりました。

【消滅時効の変更内容】

旧民法:

「権利を行使することができる時」から10年

新民法:

「権利を行使することができる時」から10年

もしくは

「権利を行使することができることを知った時」から5年

ここで言う「権利を行使することができる時」とは、債権者による権利行使にあたり法律上の障害がなくなった時を指します。簡単に言えば、返済の見込みが立たないまま滞納が続き、裁判上の回収に踏み切れるようになったときです。

一方、新民法で新しく加わった「権利を行使することができることを知った日」とは、権利行使できることを債権者が認識した日の翌日を指します。権利行使できる日=返済日であり、債権者がそれを把握していないはずがありません。したがって、より身近な表現では約定返済日の次の日だと言えます。

 

法律上の一般的な解釈によると、ほとんどの例で「権利を行使することができる時=権利を行使することができることを知った日」となります。つまり、債務者の大半は最後の約定返済日から5年で消滅時効を主張できるのです。

 

改正点2:商事債権の消滅時効の廃止

2つめの改正点は、ビジネスを目的とする債権(=商事債権/債権者もしくは債務者が商人であるケース)の短期時効の廃止です。

 

旧法では商事債権の時効を5年としており、銀行や消費者金融に対する借金に適用できていました。とはいえ、左記ルールが知らない人の多くは、当然「自分の借金の時効は民法の10年か商事債券の5年か分からない」と混乱するでしょう。

そもそも、債権債務関係のほとんどはビジネス目的です。民法・商法の2つの法律で消滅時効を定めておく必要性はないに等しいと言わざるを得ません。

以上の理由から、結局のところただ紛らわしいだけだったとの判断のもと、商法上のルールの廃止に至りました。

 

改正点3:職業別の短期消滅時効の廃止

最後の改正点は「特定の職業の人からサービスを受けたときの対価」に定められていた短期時効の廃止です。端的に言えば”ツケ払い”にあたり、旧民法では職業別に1~3年の時効が設けられていました。

【職業別の短期時効とは】

医療費・工事費

→消滅時効3年

弁護士費用・公証人費用・教育費・生産者や卸商人の支払う商品代金・職人が受け取る制作代金

消滅時効2年

飲食料・席料・入場料・短期雇用者の給料・演芸を行う人の報酬・動産のレンタル料

→消滅時効1年

これらの時効がなくなったのは、不払いを巡って訴訟を提起した人の救済を目的としています。

訴訟にも相当の費用がかかるため、回収できなければ債権者の商売に影響します。時効援用による損失額しだいでは、債権者個人の生活まで圧迫してしまうかもしれません。

以上のような観点から、報酬を回収できないままの債権者が少しでも報われるよう、民法の消滅時効(5年または10年)への統一が図られました。

 

新民法の時効ルールはすぐ適用されるわけではない?

経過措置

 

新民法の施行は2020年4月1日からとされていますが「当日になればすぐ時効の考え方が変わる」というわけではありません。債権債務関係の当事者を混乱させないよう、経過措置が実施されるからです。

経過措置の内容によると、施行の前日(2020年3月31日)の時点ですでに存在している借金については、滞納が始まっているかどうかに関わらず旧民法の消滅時効ルールが適用されます。

 

民法改正後も時効援用で注意したいポイント

借金時効の注意点

 

民法が改正されるかどうかに関わらず、消滅時効を主張して借金の返済義務を免れるときは下記ポイントに注意しましょう。

 

安易に返済or返済約束をしない

時効はあくまでも「弁済がないにもかかわらず権利行使しない債権者より、債務者を優先して保護するもの」です。

時効が成立するまでの間に1円でも返済してしまったり、あるいは口頭や文書で返済を約束してしまったりすると、その時点で消滅時効のカウントが振り出しに戻ってしまいます。

消滅時効の成立を確信している(あるいは近日中に控えている)ときは、たとえ口約束でも返済に応じないよう心掛けましょう。

 

債権者対応は弁護士に任せる

債権者と連絡が繋がる限り、うっかり返済約束してしまうリスクはなくせません。消滅時効の援用を確実に成功させるには、早々から弁護士と受任契約を結ぶのがベストです。

弁護士が代理人として介入すれば、債権者からの直接連絡は一切禁止されます(貸金業法第21条)。弁護士から受任を知らせる際も「債務の承認にあたらないこと」(=返済や返済約束をするものではないこと)を通知内に付記してもらえるため、誤って消滅時効をリセットさせることはありません。

ひとりで無理に対応しようとせず、プロに任せましょう。

 

まとめ

今回の法改正では消滅時効に大きな変化はありません。銀行や消費者金融に対する借金は、これまで通り5年で消滅時効を迎えます。

他方、消滅時効を援用する際の注意点にも変化はありません。なるべく早く債務整理に強い弁護士に任せ、落ち着いて返済義務がなくなるのを待てるよう体勢を整えましょう。

 

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