大切な人がどんなに困っていても、自分の名前でお金を借りさせる行為は控えましょう。この行為は「名義貸し」と呼ばれ、刑事罰や借金の返済義務を負わされる結果となってしまいます。

それでも頼み込まれて名義貸しをしてしまった場合、どう対処すればいいのでしょうか。いろいろな名義貸しの例を見ながら、リスクや今すぐ取るべき行動について紹介してみます。

名義貸しのリスク

知られざる名義貸しのリスクとは

 

名義を貸した相手の行為に対する責任は、全て名義人本人に課せられます。貸した相手の悪意や不注意を裁判所に訴えても、名義人の本人の責任はなかなか免れることが出来ません。

債務者は名義人本人に課せられる

最も注意したいのは、名義貸しの相手が作った債務は名義人本人のものとなる点です。ローン契約で発生した借金の返済義務も、名義貸しが原因で生じた損害賠償義務も、すべて名義人が被る事になるのです。

 

この点の結論は、裁判で争っても覆すことは困難です。

「法的契約ができる状態※になかった」「脅されていた」等の特別な事情がない以上、リスクについて初めから理解していたはずだと指摘されてしまうからです。

参考法的契約ができる状態とは

民法では、事理弁識能力のない人(=認知症や知的障碍の人)と未成年者は、自分の意思で法的契約が出来ないとされています。左記のような人が行った契約は取り消せる上、名義貸しから生じた債務は現に出来る範囲で果たせばよいとされています。

反対に、成人かつ事理弁識能力が十分ある人については、名義貸しによって生じた債務は全て果たすことになります。

そもそも名義貸しは法律違反にあたる

名義貸しはたとえ善意であっても違法です。

債権者や契約の相手方を欺いたとして、詐欺罪(刑法246条)により6月以下の懲役または100万円の罰金が科せられます。状況によっては私文書偽造・業務妨害など他の罪に問われることもあります。

名義貸し当事者の関係性や考え方にかかわらず、絶対にやめるべきです。

よくある名義貸しトラブルの例

よくある名義貸しトラブルの例

名義貸しと呼ばれる行為は実にさまざまで、家族や友人間ではよくあるやりとりも該当することがあります。ここで一度具体例から自身の状況を振り返ってみましょう。

頼まれてローンを契約した

何らかの事情で与信審査に通らない(もしくは申し込めない)人のために、自分名義でクレジットカード発行やローン契約を行わせる行為です。

同居家族間や離れて暮らす親子の間で行われることが多く、問題が表面化しづらいのが難点です。

所有している車orバイクを貸した

貸し出されるのは契約者名義だけではありません。自分の所有物を他人に使わせることも、広い意味での名義貸しに当てはまります。

特に重大な結果を招きやすいのは、所有している車両の貸し出しです。借りた人が交通事故を起こした場合、事故の相手方に対する賠償責任は名義人が負わなければなりません。

参考:平成30年12月17日最高裁判決(リンク

→生活保護受給者が他人名義の車を利用して事故を起こしたケースで、名義人本人に賠償責任があると判断されています。

銀行の預金口座を貸した・売った

預金口座を他人に自由に使わせることは、銀行からも禁止されています。発覚すれば金融機関との取引がすべて凍結され、名義人自身の生活に必要な収入の出金もままならないでしょう。

口座売買を行った場合は、買取者の犯罪行為に加担したとして、重い刑事罰に課せられます。

詐欺業者に名義貸しをさせられた

投資会社や商材販売業者を名乗る人物に「便宜上あなたの名義で不動産を買いたい・ローンを契約して欲しい」と言われることがあります。

こうした人物の多くは詐欺業者であり、うっかり騙されると名義貸しに当てはまってしまいます。

名義貸しで借金が出来てしまった時の対処法

名義貸しトラブルに巻き込まれた時の対処法

 

名義貸しトラブルに巻き込まれたときは、慌てて自己判断で行動しないよう注意しましょう。

「刑事罰に問われたくない」と隠蔽してしまうのも禁物です。借金が原因で生活が立ち行かなくなり、ますます大きな犯罪に加担させられてしまうこともあります。

まずは専門家に相談した上で、正しい対応を取りましょう。

返済前に弁護士に相談する

名義を貸した相手に見過ごせない過失がある場合、弁護士による対処で名義人自身の責任を減らせる場合があります。これを前提に注意したいのは債務を果たす前に相談するという点です。

借金の一部だけでも返してしまったり、損害賠償責任を負うと約束してしまったりすると、その時点から名義人としての責任を全面的に認めてしまうことになります。

警察に届け出る

「脅迫や詐欺被害に遭った」「無断で名義を使われてしまった」というケースでは、警察に相談して被害届を提出するのも一つの手です。後々名義貸し責任について争うことになった場合、抵抗できない状況だったことを示す証拠として、届出証明が利用できます。

ただし、警察に相談しても「自己責任だ」と突っぱねられる可能性は否定できません。その際は弁護士に相談することをおすすめします。

求償権を行使する

もし相談前に債務を果たしてしまった場合、名義を貸した相手に対して「借金を立て替えておいたので返してほしい」と請求できる可能性があります(=求償権)。

Point求償権が使える可能性のあるケース

  • 夫婦間の名義貸し
  • 詐欺被害による名義貸し
  • 勝手に自分名義の車を乗り回されて事故を起こされた場合

とはいえ、求償権行使は決して一筋縄ではいきません。心理的負担を軽減するためにも、弁護士に交渉を頼むべきでしょう。

どうしても債務を果たせないときは

これまでの対処をしても、名義貸しの責任を全面的に負う可能性は高いと言わざるを得ません。

「借金を引き受けたが返済できそうにない」という状況なら、債務整理で解決可能です。債務整理には複数の方法があり、状況に応じてデメリットが少なく負担の軽い方法を選ぶことが出来ます。

参考債務整理の方法

任意整理:債権者と個別に交渉して借金を減額する

個人再生:裁判所を通し、借金を下限100万円まで減額してもらう

自己破産:裁判所を通し、借金の返済義務を免除してもらう

問題は、損害賠償義務については債務整理とは別の対処が必要になる点です。賠償の相手方と直接話し合い、時には保険会社への連絡も必要になります。

まとめ

名義貸しで負うリスクは無限大です。

刑事罰に問われ、発生した借金や損害賠償責任は全面的に負わなければなりません。名前を貸した相手によほどの悪意がない限り、責任を減らす(もしくは免れる)ことは難しいでしょう。

「自分のやっていることは名義貸しかもしれない」「名前を貸した人が多額の借金を負った」という場合は、すぐに専門家に相談しましょう。

 

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