「もしローンが支払えなくなったら、保証人にはどんな迷惑がかかるんだろう」
まだ債務整理を検討する段階にない人でも、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
ひとくちに保証人と言っても単純保証人」と「連帯保証人」で責任の範囲は大きく異なります。「保証の種類しだいで、本人の返済が滞ると同時に家族を破産に追いやってしまうかもしれません。
ローンを利用する人なら誰でも知っておきたい「保証契約の種類&責任の重さ」について、徹底解説します。
目次
責任の重さは「連帯保証人>保証人」
本人が支払えなくなった時に備える保証契約には、単純保証と連帯保証の2種類の契約が存在します。
このうち債権者にとってメリットがあるのは、連帯保証のみです。単純保証には色々な権利が認められ債務の一部しか担保しない一方で、連帯保証人には督促を拒む権利がなく・保証範囲も債務全額に及ぶからです。
実際に、「ローン契約の話題で「保証人」もしくは「保証契約」と表現する場合、多くの場合で「連帯保証(人)」を意味しています。
連帯保証が必要なローン:消費者金融or銀行の個人向けカードローンを除く、ほぼ全ての契約
単純保証が必要なローン:奨学金・住宅ローン・事業融資など、複数の人と保証契約を結ぶローン
※保証してくれる人のうち、必ず1人は連帯保証契約を結ぶ
単純保証人と連帯保証人の違い
保証契約には、通常「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」の3つの権利が含まれます。
これらの権利は単純保証人に認められているのに対し、連帯保証人には一切ありません。債務者本人が返済できなくなった場合、単純保証人には「本人に対して優先的に債権回収してほしい」と言えるのに対し、連帯保証人は督促・差押えをされても一切抵抗できないのです。
単純保証・連帯保証のあいだにある3つの違いを具体的に解説すると、次の通りです。
違い①債権者からの督促タイミング
単純保証人への督促は「債務者本人と連絡がとれない」といった事情が発生するまで、法的に認められません。催告の抗弁権(民法452条/督促を拒む権利)があるからです。
ところが権利のない連帯保証人に対しては、特別な理由がなくても督促することが認められます。
債権者にとっては、債務者本人が約束した返済期日を守らなかった段階で、すぐに連帯保証人に連絡をとっても構わないのです。数日程度の滞納を繰り返していると、不安に思った債権者を通じ、実家や友人知人にルーズな返済状況がバレてしまう可能性があります。
違い②債権者による差押えor強制執行のタイミング
債務者本人が滞納を続けると、債権者は法的回収手続き(差押えまたは強制執行)を検討し始めます。
単純保証人に対し、債務者本人より先に法的回収を始めることは許されていません。検索の抗弁権(民法453条/先に債務者本人に対し法的回収すべきと訴える権利)があるからです。
しかしこの権利のない連帯保証人に対しては、債務者本人より先に債権回収の訴えを起こしても構いません。債権者にとっては、債務者の資産が少なく払える見込みがないとはっきりしている場合、むしろ連帯保証人から優先的に回収したほうが早く問題解決できます。
どうしてもローンを返済できずに長期滞納を続けてしまうと、保証してくれている家族や友人に思いがけず迷惑をかけてしまいかねないのです。
違い③保証する金額
保証人が複数いる場合、一人あたりの保証範囲は「債務額÷保証人の頭数」が原則です。これは分別の利益(民法456条)と呼ばれ、単純保証人に認められています。
ところが連帯保証人の場合は、ひとりで債務額全額を保証しなければなりません。自分以外の単純保証人が「お金がなく全く支払えない」と申告した場合、連帯保証人だけで借入残高を清算しなければならないのです。
違い①・②で紹介した連帯保証人の特性とあいまって、債務者本人が借金から逃げ回れば「ある日突然実家の資産が差し押さえられた」「保証してくれている友人の預金口座が凍結された」という事態に発展しかねません。
連帯保証人とは、つまるところ「債務者本人と同じ義務を負う人」に他ならないのです。
債務者本人が自己破産すると保証人はどうなる?
債務者本人が破産手続きを始めると、保証人に対して債務の一括請求が行われます。
保証人が「分割請求なら支払える」と交渉を始めた段階で金融事故扱いとなり、万が一まったく支払えない場合は一緒に破産手続きを進めなければなりません。
当然、債務者本人と共倒れになるリスクは、単純保証人より連帯保証人のほうがはるかに高いと言えます。保証範囲が債務全額に及ぶ上、自己破産手続きが始まった段階で前に請求に応じなければならないからです。
自己破産は保証人を道連れにすると心得て、万が一の時は保証してくれている人へ事情を説明しておく必要があります。
保証人に迷惑をかけないようにするには?
すでに取引しているローン契約から保証人を外すことは、ほぼ不可能です。万が一返済が滞った場合、保証人に迷惑をかけないよう次の2つの対処法を心がけましょう。
対処法①債権者からの連絡には必ず応じる
何よりも大切なのが、債権者からの連絡をシャットアウトしないよう心掛けることです。
借主の生活を守る目的で改正された貸金業法は「むやみに債務者以外と連絡をとってはならない」と解釈されています。たとえ連帯保証契約があっても、銀行・消費者金融は貸金業法上のルールを優先しなければなりません。したがって、よほどの事情がない限り、保証人に連絡をとられてしまうことはないのです。
しかし一旦「債務者と連絡がとれない」という状態に陥ると、やむを得ない状況として保証人に連絡を取り始めることが出来ます。こうしたことを踏まえると、督促電話や郵送物にはきちんと応じることが大切です。
弁護士に依頼すれば代わりに対応してもらえる
どうしても自分で対応できない場合は、弁護士に相談・依頼しましょう。
債務整理の契約を正式に結び、これを知らせる受任通知(介入通知)を送付してもらうことで、債権者には債務者側の弁護士を通して連絡する義務が発生します。
「保証人に連絡されたくない・かといって督促で自分の生活をこれ以上脅かされたくない」という状況を、弁護士はほぼ即日で解決してくれます。
対処法②「任意整理」で借金を減らす
保証契約のある債務は、整理に着手することで保証人に債務履行を求められてしまいます。
自力で返済して保証人に迷惑をかけないことを最優先にするのであれば、一部の債務だけを整理対象から外せる「任意整理」がおすすめです。
依頼先の弁護士に債権者と個別交渉してもらい、ほかの債務を減額することで、結果的に保証人の存在する契約も返済負担を減らすことが可能です。
任意整理は早期着手が肝心
任意整理はいつでも・だれでも出来る手続きではありません。減額できるのは利息と過払い金だけであり、あくまでも元本は完済することが前提です。
収入が減り借金がかさんだ状態で交渉を始めても、債権者の理解を得ることは出来ません。無理に返済を続けようとせず、これ以上家計収支が悪化する前に相談することが、保証人に迷惑をかけないための近道となります。
まとめ:保証人の責任は重い!迷惑をかけたくないなら早めの対処を
保証契約には単純保証と連帯保証があり、単に「保証人」と呼ばれる場合は「連帯保証人」を意味することがほとんどです。
単純保証では、債務者本人に対する督促&法的債権回収手続きが終了するまで、生活を脅かされることはありません。ところが連帯保証では、滞納が始まった段階で債務者本人と同等の責任を負わされてしまいます。
借金が膨らむほど、保証人を督促&法的回収から守ることは難しくなります。保証人のいるローン契約でどうしても支払いが難しくなった場合、貸金業者からの督促には誠実に対応すること・早めに弁護士に相談することの2点が大切です。