債務整理中、思いがけず裁判所から「訴状・支払督促」と呼ばれる通知が届くことがあります。
家族に知られて心配をかける可能性があることはもちろん、債務整理できず処罰されたり財産を取り上げられるのではないかと大いに不安に思うことでしょう。
今後も借金減額を目指す上で、裁判所から届いた手紙にはどう対処すればいいのでしょうか。そもそもなぜ、弁護士に依頼しているのに訴訟が止められないのでしょうか。
本記事では、債務整理中に届く訴状・支払督促の扱い方について紹介します。
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債権回収訴訟を起こされても債務整理できる
裁判所から届く手紙(訴状・支払督促)は、言うまでもなく貸金業者が裁判所に訴え出て債権回収を始めようとする際の通知です。
はじめに結論を述べると、債権回収訴訟を起こされても「債務整理に失敗した」というわけではありません。多くの場合、滞納長期化が原因で機械的に法的回収手続きが進められているだけであり、弁護士と貸金業者との交渉は継続しているからです。
したがって、届いた手紙への対処さえ適切であれば、訴えを取り下げてもらった上で借金減額に成功する見込みは十分あります。
刑事罰を受けることはない
訴訟には「刑事事件」と「民事事件」の2種類があります。
貸金業者による債権回収訴訟は民事事件にあたり、逮捕や収監されることはありません。あくまでも当事者同士の対立を解消するための手続きで、何らかの罪状がつくものではないのです。
したがって「訴状が届いたから前科がつく」「社会復帰できないかもしれない」と焦る必要はありません。
弁護士でも訴訟を止められない理由
裁判所から手紙が届くのは、弁護士の落ち度ではありません。弁護士権限で止められるのは「裁判外での督促」だけであり、訴訟するかどうかは貸金業者の一存で自由に決められるからです。
大手の貸金業者には「滞納が一定期間に達した段階で念のため訴訟を起こしておく」といったマニュアルを定めている会社が多いのも事実です。
債務整理を始めてからまだ一切連絡が来ていない段階でも、裁判所から何か通知が届いたときの対処を油断せず押さえておくべきでしょう。
【内容別】裁判所から届いた手紙の対処法
裁判所から届く手紙には「訴状」と「支払督促」の2種類があります。
どちらであっても、必ず到着から2週間以内に回答しなければなりません。訴状・支払督促のそれぞれの内容について解説します。
「訴状」だった場合
訴状とは、強制執行の申立の一歩手前の段階である「債権回収訴訟」の提起と裁判所への呼び出しを知らせるものです。
原告である債権者の名前・訴えられた理由・原告が債務履行を希望している旨の各内容に加えて「答弁書」が添付されています。期限内に呼出に応じられないときは、被告(債務者)として主張内容を答弁書に記入・返送しなければなりません。
答弁書に記入する内容については、債務整理の依頼先弁護士と一緒に検討します。
「支払督促」だった場合
支払督促とは、債権回収訴訟の前に行われる「裁判上の督促」(督促の最終段階)です。厳密にはまだ訴訟に発展しておらず「督促に応じるなら裁判をせず私的な話し合いで解決したい」という債権者の意思の表れです。
また、支払督促も回答を要します。訴状と同じく債務整理の依頼先弁護士と相談し、原則として代理人による回答を依頼します。
裁判所からの手紙に回答しないとどうなる?
裁判所から届いた手紙(訴状・支払督促)に応じず放置してしまうと、債権者の主張内容がそのまま認められて法的回収手続きの次の段階へ進みます。最終的には強制執行または差押えへと進んでしまうのです。
回答期限は厳格に守る必要がある
答弁書返送・支払督促への回答は、期限厳守(訴状または支払督促の送達から2週間以内)とされています。
なにか事情があったとしても、2週間より後に回答することは出来ません。回答が遅れてしまった場合も、やはり強制執行や差押えへのカウントダウンが進んでしまうのです。
法的回収手続きの流れ
強制執行や差押えはすぐに行われるのではなく、裁判上の督促から3ヵ月~6ヵ月かけて進められるのが一般的です。
しかし、当初の金銭貸借契約の内容によっては、より短期間で最終手段へと移行してしまうことは否めません。
【参考】強制執行または差押えまでの流れ
①支払督促…2週間
⇒回答がないときは②へ
②債権回収訴訟…1ヶ月~2ヵ月程度
⇒出廷または答弁書返送がない場合「確定判決」が出て③へ
③強制執行・差押えの申立…1ヶ月~2ヵ月程度
⇒執行前に改めて督促が行われ、2週間以内に回答がなければ手続き開始
※強制執行認諾付公正証書で金銭貸借契約を結んでいる場合・担保権がある場合は、②は省略される
強制執行or差押えの手続きに進むとどうなるのか
万が一財産を差し押さえられる事態になれば、職場や家族に知られてしまうのは必至です。
給料の差押え手続きは支払い事業者(=勤務先)を通して行われます。預金口座も凍結され、扶養家族の生活に著しい支障をきたしてしまうことは避けられません。
こうならないように、弁護士に依頼している場合も油断せず早めの対処を心がけることが大切です。
訴訟を起こされないようにするには
借金トラブルを裁判所に持ち込まれないようにするために、何よりも「早期の債務整理着手」が大切です。
債務整理が始まれば督促は止まり返済も不要になりますが、メリットばかりだとは言えません。返済しない間に訴訟のカウントダウンが進み、訴訟に移行する確率はどんどん上がるからです。
滞納が長引かないうちに弁護士に決着をつけてもらえるよう、出来るだけ「滞納することが確実になった段階」での相談を心がけると良いでしょう。
まとめ
債務整理中に裁判所から手紙が届いたときは、内容を確認し一刻も早く担当弁護士に相談しましょう。回答しないまま放置していると、強制執行や差押えに進んで周囲にも迷惑をかけることになってしまいます。
そもそも裁判に発展させないためには、滞納を長引かせず早期相談を心がけることが大切です。