債務整理方法のうち任意整理・特定調停の2種類は、いずれも債権者との交渉で借金減額を実現する手続きです。「特定調停なら裁判所が仲裁してくれるから弁護士費用がかからない」と考える人もいますが、重大なデメリットがあることも意識しなければなりません。
どの交渉方法が自分に適しているか判断できるよう、任意整理・特定調停の各手続きの内容と具体的な違いを紹介します。

任意整理と特定調停の違い

任意整理と特定調停の最も大きい違いは「裁判所を通すかどうか」です。
任意整理は裁判所を通さず、債務者本人またはその弁護士と債権者との二者間交渉で話し合いを進めます。一方の特定調停は、債務者か債権者のどちらかが裁判所に申し立てた上で、調停委員の仲裁のもと交渉を行います。

【任意整理の一般的な流れ】
①弁護士に依頼する
②取引履歴の開示請求を行う
③債権者と交渉する
→和解または訴訟へ

【特定調停の一般的な流れ】
①契約書・取引履歴を収集する
②裁判所で調停申立を行う
③債権者との話し合い
→調停成立or不成立へ

任意整理は貸金業者と債務者の合意で自由に取り決められますが、特定調停の結果には調停委員・裁判官の判断が強く影響します。弁護士と裁判所のどちらの権限が働くかによって、任意整理と特定調停でそれぞれメリット&デメリットも発生します。

債務者にとって大きく有利にも不利にもなり得る重要な違いは、次の5点です。

違い1:督促が止まるまでの期間

特定調停は督促が止まるまで時間がかかる

任意整理は最短即日で督促を止めることが出来ますが、特定調停では手続き着手から1~2ヵ月間は督促対応しなければなりません。
そもそも債務整理中に督促が止まるのは、貸金業法で「取立て行為の規制」が定められているからです。左記条文では、以下のいずれかの時点から「債務者へ直接取立てを行ってはならない」と定められています。

督促が止まるタイミング(貸金業法21条9項)
①弁護士が受任したとき
②裁判所における民事事件(調停)に関する手続きを行ったとき

任意整理では手続き着手(弁護士に依頼)した段階で上記①の要件を満たし、貸金業者との交渉材料となる取引履歴の開示は後回しに出来ます。ところが特定調停では、長い資料収集時間の末に申し立てをすることで、ようやく上記②の要件を満たすことになるのです。

特定調停で出来る「民事執行手続の停止」とは

強制執行・差押えの停止命令を裁判所から出してもらうことが出来るのは、特定調停だけのメリットです。
裁判所を通さない任意整理では、弁護士による法的回収手続き停止の交渉は“お願い”に過ぎず、強制力を持ちません。

すでに債権回収訴訟がある程度進んでいるなら、受任した弁護士の判断で任意整理から特定調停に切り替えてもらうことも可能です。

違い2:過払い金請求の可否

 

任意整理と特定調停のどちらが過払い金請求できる?

任意整理では「利息+過払い金」のセットで減額交渉を進めることが出来ますが、特定調停では利息部分の交渉しか出来ません。現在の問題である契約金利・過去の問題である過払い金は別件であり、別々に申し立てるべきというのが司法の考え方だからです。

調停申立時点で過払い金があることがはっきりしているなら、調停とは別に過払い金請求訴訟も提起しなければなりません。訴訟手続きでは法的証拠や専門用語を用いた弁論を求められることがあり、結局弁護士の手を借りなければならないことになります。

違い3:遅延損害金の発生

債務整理を始めたのに遅延損害金が発生する?

任意整理では、交渉が始まった時点で弁護士が残債を確定させるため、遅延損害金は発生しません。
ところが特定調停では、調停成立時点まで利息と遅延損害金が発生し続けます。裁判所ではルールに沿った公平かつ画一的な対応が行われており、債務者にとって有利な処理を行ってくれることはありません。

違い4:手続き期間

任意整理と特定調停の手続き期間比較

任意整理は最短3ヵ月程度で手続きが完了するところ、特定調停は5~7ヵ月程度要します。

任意整理における交渉は、弁護士と貸金業者のあいだで郵送・FAX等を使って迅速に行われます。しかし特定調停では、裁判所が決めたスケジュールを厳格に守らなければなりません。調停期日は1~2ヵ月毎と間隔が空きがちで、準備する余裕に恵まれるものの話し合いが遅々として進まないのもデメリットです。

違い5:二度目の債務整理ができるか

貸金業者との交渉が終われば、3~5年かけて返済しなければなりません。突発的な病気や介護義務の発生が原因で、払い続けることが難しくなることもあるでしょう。そんなときは、貸金業者と再度交渉する道も考えられます。

任意整理では、2度目の債務整理交渉も可能です。しかし特定調停では、再交渉に応じてもらえることなく強制執行または差押えへと移ります。
その違いをもたらしているのは「債務名義」の有無です。任意整理の和解契約書は、裁判所が認めるまで債務名義として使用することはできません。一方で調停成立後に発行される調書については、そのまま債務名義として効力を持つのです。

債務名義とは
強制執行・差押えは手続きが厳格化されており、契約書や督促状の配達証明だけではすぐに財産を取り上げることは出来ません。法定の督促手順を踏み、裁判所からのお墨付きである「債務名義」を債権者が得て、ようやく財産処分の着手が認められます。

任意整理・特定調停のどちらがいい?

任意整理と特定調停のどちらを選ぶべき?

これまでのことを整理すると、任意整理のほうがどの債務者にとっても有利であるように感じられます。実際には状況に応じて一長一短であるため、柔軟に方法を切り替える必要があるでしょう。
それでは、どんな状況の人に任意整理または特定調停が向くのでしょうか。

特定調停が向く人

特定調停での裁判所の立場は、あくまでも客観中立的でルールに基づいたものです。
「債務者にとって有利な条件を実現しにくい」「一旦成立した条件を覆すことが出来ない」という点を考慮すると、調停取下げも視野に入れた上での特殊な状況下で選択したほうがいい手続きと言えます。

特定調停が向く人
強制執行・差押えの手続きを確実に止めたい人
過払い金がない人
3~5年に渡って安定した収入があると確信できる人

任意整理が向く人

任意整理は弁護士の権限を用いた私的な交渉であり、債務者にとって有利な和解内容を実現しやすいのがメリットです。
「督促停止が早い」「再交渉もできる」と他の長所があることを考慮すると、債権者からの訴訟がよほど進んでいない限り、任意整理を選択したほうが良いでしょう。

任意整理が向く人
過払い金がある人
借金の減額幅を重視する人
持病や介護など、収入減のリスクに繋がる事情がある人

まとめ

任意整理と特定調停のどちらが自分に合っているのかという点について、自己判断を下すことはおすすめできません。

任意整理または特定調停を選ぶ目的は「日々の生活から借金の影響を取り除くこと」です。債務者を取り巻く事情(収入・職業・これまでの経緯・家族構成や持病など)によって、どちらの手続きが適しているかは全く異なります。
最終的な判断は弁護士に委ね、債務整理の計画を進めてもらいましょう。

 

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